昔々、山の村にたいそう貧乏なじいさまとばあさまが暮しておった。
明日はお正月というのに食べるものもないじいさまは傘をこしらえて、ばあさまに言った。
「傘を売って、おもちを買ってくるからのう」町の市はたくさんの人で
賑わっておった。じいさまは声をはりあげた。「かさやぁ 傘はいらんかね」けれども、立ち止まる人さえいない
しかたなくじいさまは帰る事にした。しんしん雪がふるなかを、じいさまはひとり歩いていった。道ばたに雪をかぶったおじぞうさまが並んでおる。
「おじぞうさま、寒いじゃろう この傘をかぶってくだされ」じいさまは、端から順番に売り物の傘をかぶせていった。ところが、おじぞうさまは六人、傘は五つじいさまは自分の傘をとって、六人目のおじぞうさまにかぶせた。
うちに帰ると、じいさまは、ばあさまに話した。「寒そうなおじぞうさまがおったので、売れなかった傘をあげてしもうた」ばあさまににっこり微笑んだ。
「それは、いいことをしなさった」その日の真夜中どこからか、かけ声が聞こえてきた。 よういやさ よういやさ 傘をかぶせたじいさまはどこから、 ずどん どすん 大きな音がして二人は飛び起きた。戸を開ければ なんとまぁ 米にお餅 野菜に魚 小判もたっぷり置いてある。
「あんれ、おじぞうさまじゃ」 よういやさ よういやさ 並んでそりをひいていく。傘をかぶったおじぞうさま やがて雪にかすんでみえなくなってしまったと。
☆12年習ったパンフラワーでも、お地蔵様を何体も作りました。何故好きなのか考えて
た時、かさじぞうの話が好きだった事に気づきました。